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桜並木を見おろして【ARS・O】

第1章 個展

賑やかな高校生たちが帰っていくと、急に画廊は静かになった。

「ごめんよ、あいつらいつもあんな感じで。」

「ううん、大野さんは生徒さんに慕われてるんやね。」

「いやぁ、ちっとも先生と見られてなくてさ。」

大野さんは、肩をすくめた。

「あのさ、美大の時のタケシ覚えてる?」

「覚えてるわ。」

タケシさんは、大野さんの美大の同級生で、陶芸を専攻していた。

私にも気安く話しかけてくれたので、よく覚えている。

「タケシがこの前結婚したんだよ。空間造形のアッコと。」

「アッコさんって、ツナギを着て鉄を溶接してた?」

大野さんのうなづいた。

「4月の初めに顔見に京都に行こうかと思うんだけど、小春さんも一緒に行かない?」

「え、一緒に京都に…?」

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