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桜並木を見おろして【ARS・O】

第11章 マンション【智】

「えっ、あの、ごめん…。」

俺はすぐに謝った。

『智さん、さすがにちょっと時間が遅いんとちがう?私も明日、店があるし…。』

「本当にごめん…。」

俺は平謝りした。

忘れてた。小春ちゃんは、昔から時間には厳しい人だった。

京都にいた時から、時間に遅れたことがない。

『高いお金出して時間を作って楽しみにして来てくれているお客さんを待たせるなんてできひん。』

芸妓だった時、小春ちゃんは言っていた。

電話したら小春ちゃんは絶対喜ぶ。そううぬぼれていた自分が恥ずかしくなった。

『……。で、どしたん?寝られへんの?』

小春ちゃんが聞いてきた。

その声はもう怒ってなくて。

ちょっとあきれているようで、でも、優しかった。

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