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桜並木を見おろして【ARS・O】

第12章 桜

営業時間が終わり、看板をしまい店を閉めた。

後片付けをしていると、店の引き戸が開いた。

そこに立っていたのは、大野さん。

「遅くに悪い、店もう閉めちゃったな。」

大野さんの顔を見るのは、久しぶりだ。

しばらく前に、作品は無事に仕上がって公募展に出品したと電話してきてくれた。

「座って?」

私は、カウンターの一席に大野さんを座らせた。

「かんにん、もう今日は定食売り切れてしもうて…。あるもので、何か作るね。」

「あんがと、腹減ってたんだ。助かるよ。」

大野さんに番茶を出すと、大野さんは私の手を握った。

「ど、どうしたん?」

驚く私の手をグッと引き寄せると、カウンター越しに両手で私の手をガッチリつかんだ。

「さ、智さん!」

私は訳がわからず固まっていると、私の顔を見て言った。

「公募展通った!入選したんだよ!」

私はカウンターから飛び出して、大野さんに駆けよった。

大野さんは大きく腕を広げた。私は迷わず飛び込んだ。

「おめでとう!」

私たちは、固いハグを交わした。

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