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桜並木を見おろして【ARS・O】

第12章 桜

絵の中の私は、桜の花びら舞う強い風に驚いた表情で。

大野さんが美大の時に描いた、祇園の女の強い顔とはまるで違う、自然な私の表情だった。

「小春ちゃんのストールが飛ばされた時、小春ちゃんが天女に見えたよ。羽衣をまとった天女に…。」

「智さん?」

大野さんは作品をそっとなでた。

「描いてる間、ずっと考えてた。小春ちゃんのこと。」

大野さんは、深い海の目をしていた。

「俺のこと甘やかさない、でもずっと見守ってくれてる小春ちゃんのこと…。」

その目は、吸い込まれそうなほど澄んでいた。

「こんな俺だけど、ずっと一緒にいてくんねぇかな?」

また出会えただけで充分だったはずなのに。

こんな日が来るなんて。

「喜んで…。」

私たちは、もう友達ではなくなった。

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