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桜並木を見おろして【ARS・O】

第12章 桜

「本当は、小春ちゃんと友達になりたかった訳じゃねぇんだ。」

「えっ?」

私が驚いて大野さんの顔を見たが、大野さんは絵から目を離さなかった。

「自信、なかったんだよ。すべてを受けとめる自信が…。」

私は、大野さんの話がまったく見えなかった。

「俺さ、ふらふらしてるし、バツイチだし、気まぐれだし、いつまでたっても子供みたいで…。」

「智さん?」

「そのくせ頑固で、ひとつのことに夢中になると他に気が回らなくて。」

大野さんは、私に目をやると真剣な表情で言った。

「だから、俺の領域に無理に入って来ない小春ちゃんの優しが嬉しかった…。」

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