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桜並木を見おろして【ARS・O】

第13章 これから

横を見ると、大野さんも緊張した顔で立っている。

おそらく、大野さんの緊張は私の比じゃないはず。

大野さんと目が合った。

大野さんは、顔をひきつらせながらも、微笑んでくれた。

そうだ、この人を見つけに東京に飛び出して。

私はこの人を見つけて帰ってきた。

母には花街で恥ずかしい思いをさせたはずだ。

きちんと謝ろう。

素直に話そう。

もし、許してもらえなくても、時間をかけてわかってもらおう。

例え許してもらえなくても、私の隣にはこの人がいる。

息を飲んで、引き戸に手をかけた。

「ちょ、ちょっと待って!やっぱ心の準備が…!」

大野さんが叫んだ。

「心の準備って…、ここまで来たのに今さら!」

「行かないとは言ってないよ。ちょっとだけ待って!」

二人で深呼吸をした。

目を見合わせて小さくうなづいた。

私は引き戸を引いた。

「ただいま、お母ちゃん。小春です。」

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