テキストサイズ

桜並木を見おろして【ARS・O】

第13章 これから

土曜日、京都駅からはバスで祇園に向かった。

市バスに乗るなんて久しぶりで。

アイドリングストップ車やノンステップ車など、バスの車両もずいぶん変わっていた。

「緊張する?」

黙って窓の外を見ていたら、大野さんが聞いてきた。

「そやね。」

私は答えた。

大野さんはふわりと微笑んだ。

バスが祇園に着いた。

バスを降り、大通りから細い路地を曲がった。

この先に、実家である置き屋がある。

足が止まった。

「やっぱり、うち、帰る…!」

きびすを返し走り出そうとした私の腕を大野さんが捕まえた。

「ダメだよ、ちゃんとお母さんと話をしないと!」

私は、我にかえった。

「そやね。かんにん…。」

私は足を進め、置き屋の前に着いた。

今さら、どんな顔をして帰ればよいのだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ