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桜並木を見おろして【ARS・O】

第1章 個展

3月の日曜日の昼下がり、私は電車に揺られていた。

電車の窓から空を見上げる。
悲しいほどの突き抜けた青空に、ぽっかりと白い雲が浮かんでいる。

普段この時間は私は店にいるので、こんな晴れ渡った昼の空に多少困惑していた。

まぶしすぎる。

私は、次の駅で降りると改札を抜けた。

天気はいいが、風は強くて冷たい。

私はストールを巻き直した。

案内状の小さな地図を頼りにその画廊にたどり着いた。

こじんまりした古い小さな画廊だった。

でも、由緒正しそうな、趣のある雰囲気の外観だった。

入り口に立てられた「大野智展」という看板を確認して、ガラス製のドアを押した。

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