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桜並木を見おろして【ARS・O】

第1章 個展

「あぁ、小春さん。来てくれたんだ。」

ソファに腰かけていた大野さんが、立ち上がって迎えてくれた。

大野さんは、ちょっとシワの寄った綿のワイシャツにネクタイを締めていた。

「個展開催おめでとうございます。」

私は、持参した花束を渡した。

涼やかなブルーを基調とした花束だ。


「あんがと…。」

大野さんは頭をかいて、花を受け取った。

画廊を見渡すと、いくつもの花瓶に花が飾られていた。

画廊は花の香りでいっぱいだった。

「さっきまでお客さんいてたんだけど、ちょうど帰ったところなんだ。」

私たち以外誰もいない画廊を見渡して、大野さんが言った。

「ゆっくりしていってよ。」

大野さんはそう言うと、花を持って奥のキッチンスペースに消えて行った。

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