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桜並木を見おろして【ARS・O】

第3章 懐かしい再会

私たちは、居間に通された。

タケシさんの家は昔ながらの旧家で、居間には囲炉裏があった。

「タケシ、母ちゃん元気か?」

大野さんがタケシさんに問いかけた。

「おふくろ入院してんだよ。脳梗塞でさ。でも、リハビリも順調だし、もうすぐ退院できそうだよ。」

「そうか、母ちゃん大変だったんだな。」

「親父は、組合からヨーロッパに視察に行ってるよ。」

「父ちゃんは、相変わらず元気そうだな。」

アッコさんが、お茶を持ってきてくれた。

「この湯飲み、私が焼いたんだよ。まだあんまり上手くないけどね。」

アッコさんは今は清水焼の修行中だそうだ。

“上手くない”なんて謙遜で、美しい姿形の湯飲みだった。

「いただきます。」

淹れてくれたお茶は、煙たい味の京番茶だった。

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