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桜並木を見おろして【ARS・O】

第4章 宴

「やっぱり、初めて会った男と個室で二人きりでモデルなんて、緊張させちゃったんだな…。そう思ったら、申し訳なくてさ。」

「それで、コーヒーに誘ったという訳か。」

初日のスケッチのあと、大野さんは私を学食のコーヒーに誘ってくれた。
その学食で、タケシさんにも会った。

「うん、俺それしか思いつかなくて。でも、タケシとか他の友達とかに“新しい彼女か?”って冷やかされて、参ったよ。」

「智は、女が切れたことなかったもんね。」

アッコさんが畳み掛けるように冷やかした。

「や、やめろよ!」

大野さんは、唇をとがらせた。

『普通の女の子』

私は今まで、そんなこと言われたことがなかった。

中学を卒業して舞妓になってずっと花街で生きてきた私を、『普通の女の子』なんて言う人はひとりもいなかった。

大野さんが初めてだった。

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