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桜並木を見おろして【ARS・O】

第6章 銭湯にて・ボーイズトーク

「え…、でも、俺が東京で小春さんに会ったのはつい3か月ほど前だぜ。」

「俺らが卒業した後すぐ、その芸妓は行方をくらましたそうだ。そして、今もまだ音信不通らしい。」

「………。」

俺は何も言えなかった。

何も知らなかったんだ。

「智さ、お前にその気がないのなら、小春さんのことあんまり振り回すなよ。さすがに気の毒だよ…。」

薬湯につかっているおじいさんが歌いだした。
何かの民謡のようだが、何の歌かはわからない。

俺は、黙って膝を抱えた。

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