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桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

「って、こんな話聞いても面白くないよね。ごめんね?」

大野さんは、私の顔を見て笑った。

顔をくしゃくしゃにして笑った。

私は、大野さんの話に何も答えなかった。

大野さんが、私がコンビニから逃げた理由を聞かなかったように。

その代わりに、ガードレールに置いた大野さんの手に自分の手を重ねた。

大野さんが私にしてくれたように。

大野さんが、私の顔を見た。

「俺って欠陥人間なのかな…。」

大野さんの目尻に涙がひとかけら見えた。

私はそれも見えないふりをした。

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