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桜並木を見おろして【ARS・O】

第8章 桜並木を見おろして

三条通の太秦の辺りで、タクシーは渋滞にはまった。

「運転手さん、ここでいいよ。」

大野さんと私は太秦でタクシーを降りた。

そこからは電車に乗った。

二両編成の小さな電車、嵐電。
京福電鉄の愛称だ。

狭い軌道。
民家の軒先すれすれのところを走る。

大野さんと私は3つ目の駅で降りた。

大野さんは、どこに行くか言わない。

私も何も聞かず、黙って大野さんの後をついて行った。

向かう場所はタクシーに乗った時からわかっている。

大野さんと出会ったあの場所。

私は、自分の中の時計を巻き戻していた。

大野さんと出会ったあの時に。

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