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桜並木を見おろして【ARS・O】

第8章 桜並木を見おろして

屋上に、突風が吹き抜けた。
私のストールが風に飛ばされた。

大野さんは、ひらり、と身をひるがえし、ストールをつかんだ。

大野さんは、しばらくストールを握りしめて、じっとこちらを見ていた。

大野さんは私に歩み寄ると、そのストールを私の肩にふわりと掛けた。

「あのさ、あらためて、俺と友達になってくんねぇかな。」

私は、大野さんの唐突な発言に首をかしげた。

「友達?」

「そ…、友達。せっかく東京で再会できたんだし。」

大野さんが、頭を掻いた。

「喜んで。」

私は答えた。

また風が吹いた。

遠くからクラクションの音が聞こえた。

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