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Starlight Kiss

第9章 tragic love②

ー翔sideー


松岡「どういう事だ」


テーブルの向こう側、昌宏さんがしかめ面で俺を見つめた。


松岡「ボーイからホストになったってどういう事だよ」


「………ごめんなさい…でも…」


松岡「この仕事する時に約束したよな。もうそんな仕事しないって」


強い口調で昌宏さんは言った。


「したけど…でも…状況が変わって…」


松岡「………」


「舞の具合…話したよね。もうすぐ手術するの。でもあの病気は…心臓移植しないと助からないんだよ。海外じゃないと心臓移植は出来ない。海外だと保険は利かない。だからお金がいるんだよ」


松岡「だからまた水商売か…」


「身体売る訳じゃないよ。お酒も飲まないし…坂本店長が言ってくれた。『変な輩が来たらその時は俺が守るから』って…だから…」


松岡「………坂本さん、か…」


飲んでいたビールのグラスを強く置くと、昌宏さんは立ち上がった。


「昌宏さん…!」


松岡「何を言っても無駄なんだろ。だったら勝手にしろ。ボーイでもホストでもウリでも」


「酷い…!ウリはやらないよ!昌宏さん以外の人とそんな事もうしない!」


松岡「ホストだって同じだ。少なくとも俺はそう思ってる。だから勝手にしろって言ったんだ。坂本さんに守ってもらうんだろ?」


「………昌宏さん…」


昌宏さんからの冷たい言葉に…俺は何も返せないでいた。


「………お願い…許して…。舞の為なんだよ…」


松岡「………」


「昌宏さん…」


松岡「………悪い。俺は無理だ」


「っっ…」


松岡「妹さんの事は…重々分かってる。俺も早く良くなって欲しい。でも…分かってても…無理な物は無理なんだよ」


「どうしても…駄目なの…」


松岡「………話は終わりだ。風呂入って寝る」


そのまま昌宏さんはリビングを出て行ってしまった。


ドアが閉じられた瞬間、こらえていた涙が溢れてきた。


「ふ、ぅ…ぐすっ…ひっく…」


昌宏さんに聞こえない様に、声を殺して俺はリビングで泣き続けた。

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