テキストサイズ

Starlight Kiss

第12章 選択の時

ー松岡sideー


成田空港のターミナルに俺は居た。
行き交う人々の人生が交差する場所。


フライトまで1時間程。
俺はベンチに座り、翔を待っていた。


「はぁ…」


落ち着かない。
気が付けば貧乏揺すりをしたりして。
来ないかもしれない人間を待っていた。


どれ位時間が経っただろう。


「昌宏さん…!」


立ち上がり、振り返るとこちらに向かって走って来る翔の姿が目に飛び込んで来た。


「翔…!」


翔「はぁっ…はぁっ…」


「来てくれたのか…」


肩で息をしながら翔は俺を見上げる。
その手には…何も荷物は持っていなかった。


「………わざわざ見送りに来なくても良かったのに」


翔「………最後に…昌宏さんに逢いたかった」


「………期待すんだろ?」


翔「ごめん」


「でも…ありがとな」


翔は…呼吸を整えながらゆっくりと口を開いた。


翔「最後に昌宏さんと過ごして…ハッキリ分かったんだ。俺は雅紀じゃないと駄目だって」


「………」


翔「昌宏さんと別れてから…俺の中で消化しきれてなかった。ずっと…引きずってたから。でも最後に昌宏さんと過ごして…やっと消化出来た。終わらせられたんだ」


「何となくさ…感じてたよ。しっくりいかなかった。一緒に居ても…お前を抱いていてもな」


翔「でも…これで良かった。もう俺は…迷わない。雅紀のとこに行ける。彼と…人生共に歩みたい」


「………幸せになれよ。絶対」


翔「うん。でも昌宏さん…貴方は俺の中で…永遠に大切な人だよ。愛してる。愛の形は変わったけど…俺の…人生の一部。一生…」


翔が俺の前に立ち、抱き着いて来る。
俺はその身体を…強く抱き締めた。


翔「貴方が俺の人生変えてくれた…出逢えて良かった。昌宏さんを愛せて…良かった」


「………俺も…。出逢ってくれてありがとう。翔、愛してる」


翔「………声…聞きたくなったら電話していい?」


「いつでも。相葉さんに泣かせられたら直ぐに言えよ」


翔「うん」


アナウンス『東京発シカゴ行き…』


「そろそろ行くよ。翔、駅まで気を付けてな」


翔「うん、ありがとう」


翔が顔を上げ、俺達は見つめ合った。


「………さよなら」


翔「さよなら」


顔を近付け、俺達は…最後の、本当に最後のキスをした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ