彩夏 ~君がいたから、あの夏は輝いていた~
第2章 友達でいたかった
翌日学校に行くと、靴箱で千咲に会った。半袖のブラウスを着ている。今日は夏みたいな気温だ。
「おはよ」
「わ。渡辺くんにあいさつされた」
「んだよ、人をバケモンみたいに」
「…いいことあったの?笑ってる」
「ないよ。あ、昨日ありがとな。喜んでた」
花束の礼を考えていたが、何も思い付かなかった。一応お金は払ったけれど、かなり友達料金にしてくれたような気がしたからだ。
「良かった。でも、18歳の誕生日を彼氏に祝ってもらえるなんて、最高だね」
「野瀬も、言えば?あいつに」
ちょうど広明が玄関ホールに入ってきた。桐野と一緒だった。
「ちょ、甲斐には言わないでよね、そういうこと!」
「はいはい」
千咲はあっという間に、靴を履き替えて階段を上がっていった。
「うぃーす、渡辺。流星、元気?」
「小野塚?元気なんじゃね?なんで?」
「いや、何となく」
「塔也、今日市営グラウンドな」
「おう」
どうでもいい話をしながら、広明と桐野と3人で階段をあがる。上から射す光に目を細めながら、もう夏の予感のする空を見上げる。今年は、甲子園を目指すことはできない。
悔しい。
悔しいけれど、高校生活はそれだけではないんだなと考えたりもする。
例えば、野球部員以外は甲子園なんか目標でも何でもなくて。
隣で昨日のテレビの話をしている桐野にとっては、差し迫るインターハイ予選のほうが大事で。
もし、ここで野球をやめてしまったらどうなるんだろう。僕は、何を目指すんだろう。
「んじゃな、あとで!」
「おう、あとで」
広明と桐野は普通科棟に向かって歩いていった。渡り廊下に出て、その窓から見える切り抜いたような空を、また見上げる。そこには、雲ひとつなく、透明な空気の跡が見えるようだ。
「渡辺くん、今日はHRないってヤマセンが」
「え、おれ今日日直か」
「私もだよ。日誌書くからこれ、お願い」
教室に入ると、同じクラスの吉田が紙の束を押し付けてきた。
ほとんど男ばっかりの、空気の濃い教室で、僕はその紙の束をみんなにまわした。
「おはよ」
「わ。渡辺くんにあいさつされた」
「んだよ、人をバケモンみたいに」
「…いいことあったの?笑ってる」
「ないよ。あ、昨日ありがとな。喜んでた」
花束の礼を考えていたが、何も思い付かなかった。一応お金は払ったけれど、かなり友達料金にしてくれたような気がしたからだ。
「良かった。でも、18歳の誕生日を彼氏に祝ってもらえるなんて、最高だね」
「野瀬も、言えば?あいつに」
ちょうど広明が玄関ホールに入ってきた。桐野と一緒だった。
「ちょ、甲斐には言わないでよね、そういうこと!」
「はいはい」
千咲はあっという間に、靴を履き替えて階段を上がっていった。
「うぃーす、渡辺。流星、元気?」
「小野塚?元気なんじゃね?なんで?」
「いや、何となく」
「塔也、今日市営グラウンドな」
「おう」
どうでもいい話をしながら、広明と桐野と3人で階段をあがる。上から射す光に目を細めながら、もう夏の予感のする空を見上げる。今年は、甲子園を目指すことはできない。
悔しい。
悔しいけれど、高校生活はそれだけではないんだなと考えたりもする。
例えば、野球部員以外は甲子園なんか目標でも何でもなくて。
隣で昨日のテレビの話をしている桐野にとっては、差し迫るインターハイ予選のほうが大事で。
もし、ここで野球をやめてしまったらどうなるんだろう。僕は、何を目指すんだろう。
「んじゃな、あとで!」
「おう、あとで」
広明と桐野は普通科棟に向かって歩いていった。渡り廊下に出て、その窓から見える切り抜いたような空を、また見上げる。そこには、雲ひとつなく、透明な空気の跡が見えるようだ。
「渡辺くん、今日はHRないってヤマセンが」
「え、おれ今日日直か」
「私もだよ。日誌書くからこれ、お願い」
教室に入ると、同じクラスの吉田が紙の束を押し付けてきた。
ほとんど男ばっかりの、空気の濃い教室で、僕はその紙の束をみんなにまわした。