テキストサイズ

ねがい*ごと

第5章 素直になれなくて


優矢に送ってもらって、マンションに着く。
つい1年前まで、一緒に暮らしていた部屋だった。


「なんか懐かしいな。あの頃にタイムスリップしたみたいだ」

「大げさね」


だけどあなたには、もう帰る場所があるよね。
私は1人で生きて行くって、あの時決めたんだもの。

「ありがとう。それじゃ」

「俺はお前が心配なんだ!」

「…優矢?」


優矢の目がせつなげに揺れて見えて、私の胸が詰まった。

「亜沙美、つらかったら俺を頼っていいからな」

…っ!


「ど、どうして?私なら大丈夫よ。毎日充実していて楽しいんだから」

ううん…


私は全然素直じゃない。


ほんとは


ほんとはね


とても寂しいの……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ