
襲われちゃう女の子
第3章 家庭教師のアルバイト
大学に入って初めてのアルバイトは家庭教師の仕事だった。
私が担当した初めての家。とても緊張していたけれどお母さんが優しくて安心した。
しかし問題なのが生徒の方である。
桐生廉くん、高校二年生の男の子。
この子がなかなか曲者で大変苦労しているのである。
「廉くん……」
「……」
こうして廉くんと机に向かって一時間が経った。それなのに彼のシャーペンは一度も動いていない。
「どうして勉強してくれないの?」
困り果てた私の問いに彼の黒い瞳がこちらを向いた。
「だってする必要がないから。俺頭いいしね」
「それは分かるけど。でも私一応お金貰ってて」
「いいじゃん、美奈子ちゃんは何もしなくてもお金貰えるんだよ?」
「……」
年下の高校生に翻弄される自分が情けない。
そういうことじゃなくてね?、と彼を説得するように話し掛ける。
「そういうことじゃなくて、廉くんには勉強する楽しさとか解けたときの嬉しさとか、そういうのを味わって欲しいの」
「なんでそんな面倒くさいことしなきゃいけないの」
「とにかく、一緒に勉強しよ?」
「……」
彼ははぁと溜息を吐くとそっぽを向いてしまった。
どうしよう、今日もまた一回も問題を解かずに終わっちゃうのかな。
