
ペットではなく家族です。
第7章 葉子の場合
留美「何も…あッ、ん…感じない?」
寛一「仕事中だからね」
留美「…私…手術するの、乳癌の手術…
手術で右の乳房を全摘するの」
寛一「!!」
留美「見た目にはなんの変化もないのに
いきなり乳癌とか言われて…」
寛一「…」
留美の表情に
変化は見られなかったが
右胸に触れる留美の手は震えていた
AV女優としても、一人の女性としても
体の一部、女性の象徴でもある
胸を失う辛さ悲しさは
計り知れず…
留美「今は色々、薬とか抗がん剤とかで
治療出来るみたいだけど私の場合、癌が
思ってる以上に進行してて…」
寛一「…いい」
留美「癌が他の臓器に転移する前に摘出
全部、全部取るって決めて」
寛一「もういい」
留美「…」
寛一「これ以上…話さなくて…」
留美「…そうだよね…こんな話し…聞き
たくないわよね…」
寛一「…」
留美「どうしたの?」
寛一「留美さんは素敵です、すごく」
そう言うと寛一は留美の前に移動し
留美の手に自分の手を
優しく重ねた
留美「…ありがとう」
寛一「…」
