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第20章 雄介 VS 真弓

梶原は 怒りがフツフツと沸き上りながら 自宅へ車を走らせる。

クソッ… 真弓め… 隼人が熱とか言いながら 本当は 嘘じゃないのか? 今まで 熱だから 帰って来いとか あいつ言った事ないし…

ああ… 舞ともっと 旅行を楽しみたかった… 2人で色んな所を もっと回りたかったし もっと セックスしたかった…

頭の中を グルグルと この2つの思いが交差しながら 自宅のドアを開ける。

「…帰ったぞ…」

怒りを含んだ ドスのある声で 自宅に入る。

すると 真弓が 太った体を揺らしながら 梶原の元に 駆けつけて来た。

「 あなた ! よかった ! 帰って来てくれたのね! 隼人が 扁桃腺からの熱だったみたいで 40度近くも 出たのよ!
今は 落ち着いて 寝てるわ… あなた… よかった…」

真弓は 潤んだ瞳で 梶原に抱きつこうとした。

しかし 梶原は その手を 振り払った。

「 お前。 電話してきたの…わざとだろ? 大袈裟に言って 俺を家に 帰したかったんだろ!…」

氷のように 冷たい目で 真弓を睨んだ。

「…そ…そんなこと… だって…私も 不安だったから…。あなたに 側にいて 欲しくて…」

「 嘘つけ! お前はいつもは 隼人が熱が出ても 冷静に対処してる… 俺の仕事の 邪魔はしないから 隼人は 任せて! って よく お前が言ってただろ? 」

真弓は 下を向いて 唇を噛んだ。

「…だって…だって… 私も 1人で 不安な時も あるのよ… あなたに いて欲しい時も…」

梶原は チッと 舌打ちをして 睨み返した。

「…大事な仕事が 中途半端に なっただろうが… なんなんだよ…」

その言葉を聞いた 真弓は 今まで 我慢し 溜め込んだ気持ちを 爆発させた。

胸の底から 悲しみの塊になった怒りが 込み上げて来た。

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