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沢村舞は この4月に30歳を迎える。 今年の年度末に 夫が会社の部署が変わったのと 娘の梨花が 幼稚園の年中さんになる為に 夫婦で話し合い マイホームを購入する事を決めた。
新しいマイホームは 郊外の静かな住宅地で 夫の会社と 舞が勤め始めた病院の受付からは少し遠いが 梨花の幼稚園が歩いて 10分くらいの距離にある為に 決めた。
空気も濁りもなく やや喘息気味の梨花には 満足出来る住宅地だった。

「 ふー やっと ある程度 引っ越しの片付けが終ったわね。少し ゆっくりしよう。」
舞は リビングのソファーに 背中を預けて ゆっくりコーヒーを啜った。

「そうだ、そろそろご近所さんに 引っ越しのご挨拶に行かなきゃ。早めに挨拶に行かなきゃ 感じ悪いよね！」

舞は コーヒーをテーブルに置いた後 腰を上げて ドレッサーの前に座り化粧を直し始めた。

今日は 日曜日の夕方だが 夫は急な仕事が入った為 お昼から会社に出勤した。 よって 引っ越しの挨拶は 娘の梨花ととりあえず 行く事にした。

まずは 右隣の お宅に伺い 引っ越しの挨拶と 沢村家の自己紹介をした。
右隣のお宅は感じのいい 老夫婦で 舞と梨花を見て にこやかに挨拶をしてくれ、梨花の頭を撫でてくれた。
〜あー 感じのいいお隣さんでよかった！でも ご迷惑にならないようにきちんとしよう〜
舞は そう決意して 次は 左隣りの家へと向かった。

左隣りの家の表札は 「梶原」と書いてあった。
ピンポーーン。と チャイムを鳴らすと ハーーイ！と高めの声がして でっぷりと体の大きな 30代後半くらいの女性が顔を出した。

「こんばんはー！ 隣りに越して来ました。沢村です！ よろしくお願いします！」と頭を下げた。
「 あらー！お隣に越して来られた方？ よろしくお願いします！うちは 梶原って言います！」
「こちらこそ ご挨拶が遅くなってすみません！あいにく 主人は急に仕事が入りまして。また主人は改めて ご挨拶に伺います！」
「そんなこと 気にされなくても大丈夫ですよ！うちも主人を紹介しますね〜！ パパー！ お隣に越して来られた方よー？」