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覚醒

第12章 禁忌への招待客Ⅱ

聡がドアの前で立ち止まる。

ドアノブをゆっくりと回し、ガチャッと扉が開いた。

部屋は、薄暗く、ベッドサイドの小さなシェードランプのみの灯りで、ほんのりと、ベッドの上で客を待ちわびる招待主を照らす。

それでも目が馴れるまでは、はっきりと見えなかった。

徐々に目が馴染むと、康太は、そこにある光景を目の当たりにし、尋常ではない衝撃が脳を撃ち抜いた。

真実が全裸で、その躰を赤いロープによって亀甲縛りで拘束され、ベッドに横たわっていた。

両手は頭上でまとめてベッドの柵にくくられ、ぼんやりと虚ろげな目で天上を見つめていた。

康太は言葉を失い、恐怖のあまり後退りした拍子に足が縺れ、よろめいて尻もちをついた。

真実は、ハッと我に返り、康太の姿を見るなり

「キャーッ!見ないで!いや~!」

悲鳴を上げた。

聡は、静かに落ちついた低音で

「どうかな?垣元君、うちの娘は。美しいだろう?さぁ、そんなところに座ってないで、もっと近くで見てやってくれ。君の為に、こんなにおめかしをして待っていたんだよ…」

「こ、これは…どう言う…」

康太の脳内は、大混乱を起こしながらも、やっと口を開いた。しかし、上手く言葉が出ない。

よろめきながら、康太はやっと自力で立ち上がり、

「ぼ、僕はこれで失礼します…」

と、ドアノブに手を掛け、部屋から逃げるように出ようとしたその時。

「待って、行かないで」

真実のか細い声に、康太の足が止まる。

「こ、康太君、ご、ごめんなさい。驚いたでしょう?でも…、でも、こ、これが本当の私」

真実は、涙に声を詰まらせながら告白した。

「真実…、君は…実のお父さんと…こんな…」

「垣元君、近親間の性的な関係は社会的にも、倫理的にも、タブーとされていることは分かっている。
しかし、お互いの心理を深くまで理解し合えるものは、親、兄弟など、血縁の濃いものが多いのだ。
このインセスト・タブーを侵す者は、表に出るものが少ないだけで、意外と多いのだよ。
私は、真実の心に棲むモノを父として、そして一人の男として受け止めたのだ。
真実は、今、君を愛している。君は、真実を受け止められるのか?それを私たちは確かめたいのだ…」

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