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覚醒

第17章 気付かぬ兆し

真実は友達とクリスマスパーティーを楽しみ、皆で帰ろうとした時だった。

真実は、フラフラと、一軒の飲み屋から出てくる男の姿を見た。

その背の高い男は、背中を丸めてよろめきながら遠ざかって行く。

康太だ。

真実にはすぐに分かった。

「……」

「ねぇ、あれ垣元先輩じゃない?」

ミサが言うと、

「あ、ほんとだ。絶対そうよ。ほら真実」

のぞみが、真実の肩を叩きながら言う。

「…そうかな、人違いじゃない?…」

真実は、俯きながら否定する。

「え~?そうかな。先輩のようにも見えたんだけど…」

のぞみが口を尖らせて、不満げな表情になる。

「ねぇ、知ってる?垣元先輩、殆ど学校休んでるらしいわよ。それに、あちこち飲み歩いたり女の子をとっかえひっかえしてるって噂」

ミサが大きな目をクルクル動かして、どこで聞いたのか分からぬゴシップを自慢気に騒ぎ立てる。

「へ~。そう言えば、垣元先輩の親友の丘崎先輩が、『アイツは魂を取られたみたいに、人が変わった』って言ってた。大丈夫なのかな~?ねぇ、真実?」

のぞみは、心配してるのか、真実の反応をみたいだけなのか、軽い口調で流す。

「…さぁ、私にはもう関係ないから…。あ、じゃあ私こっちだから。今日は楽しかった。またね。良いお年を」

真実は、友達の煩わしさから逃れるように、別れ、小走りに家路に向かった。

『康太君、後ろ姿だけしか見えなかったけど、ちょっと痩せたような気がする…。それに…のぞみが言うように、ちょっと雰囲気が変わった感じもしたわ…私のせい?もう、私のことなんて忘れたよね…。あんなこと、受け止めてって言う方が、そもそも無理なのよ。私を受け止められるのは、パパだけ…よね…?康太君…』

真実の心境は、複雑だった。


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