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覚醒

第18章 愛と情欲の行方

「明けましておめでとうございます」

新しい歳を迎えた。

何ヵ月振りだろう。家族が3人揃うのは。

聡は、真実と熱い一夜を過ごすため、夏海の帰宅日を避けて帰宅していた。

聡は、気まずい気持ちを隠し、平常心を装っていた。

「真実、とても綺麗だよ!馬子にも衣装ってやつかな?」

「パパったら、ひど~い。ウフフッ」

「ハハハッ、冗談、冗談。本当に綺麗だ…」

「素敵でしょ?真実によく似合ってるわ」

「ママ、ありがとう。ちょっと苦しいけど、気持ちが引き締まる感じ」

聡は美しい真実の着物姿に目を奪われていた。

薄桃色の正絹の生地は美しい光沢で、袖と裾に艶やかな芍薬の花柄が染め付けられている。色白の真実に、本当によく似合っていた。

襟から、スッと伸びる白く細いうなじ、ほんのりと甘く香る白檀は、若い真実には少し地味な香りだとも思えたが、いつもと違う真実を見ているようで、真実の妖艶さを数倍にも演出していた。

聡の股間は熱く、脈打っていた。

夏海は聡の真実を見つめる熱い視線に気づく。嫌な予感はどうか間違いであって欲しいと願っていた…。

空気を変えるように夏海が切り出す。

「お正月から、こんな話、どうかとも思ったんだけど、西野教授からドイツでの研究の件、早急に返事をって、急かされてるの…。でも、まだ迷ってて…」

「私のことなら大丈夫。こんなチャンス無いわよ。行くべきよ。絶対。ねぇ、パパ、パパもそう思うでしょ?」

「ああ。こっちのことなら何も心配は要らないよ。君の夢が叶うチャンスだ。この研究が上手く行けば、癌に苦しむ人を救う事ができるかも知れないじゃないか?そうなれば、お義父さんも、天国できっと喜ぶよ」

「…ええ、それは…。そうね、前向きに考えてみるわ。ありがとう」

プルルル…プルルル…

電話が鳴る。

夏海の研究チーム仲間からだった。これから西野教授に新年の挨拶に行くことになった夏海。年末に、正月は家族と過ごすと言って、断った筈なのだが、やはり、夏海が来なければ…としつこく誘われ、とうとう行くはめになった。その後、新年会も誘われた。断れない夏海は、渋々家を出た。

夏海がいなくなり、真実と聡は二人きりになった。

聡は、真実の躰を抱き寄せる。

「真実、今日の君は特別に美しい…。パパの部屋へ来なさい」

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