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覚醒

第19章 忌まわしい再応






初めて聞く母の壮絶な人生に真実は言葉を失った。

そして、母と自分の奇妙な運命の一致に、言葉では形容し難い何かを感じ、ゾワッと鳥肌が立つ。

夏海の嗚咽は止まらない。

「…ごめんなさい、私…こんなこと…どうすればいいのか分からない…少し考えたい…」

「夏海…すまない…私は…」

聡は、それから何も言えなかった…。

「…ママ…ママもお父さんのことを愛していたのね。だったら…だったら私の気持ち…ママにも分かる筈よ!私もパパを愛しているの。小さい頃からずっと…。パパを誰にも渡したくないの!もちろんママにも…。許されないことなんか初めっから分かってる…でも、もう止められない…」

「…真実…分かってる…分かってるからこそ辛いの…でもきっと、私と同じ苦しみを味わうことになるわよ!私が、私の母のようにここを出たとしても、私があなた達の関係を認めたとしても、世間はそんなこと認めない!そんなに甘くないわ!苦しくて辛くて、死にたくなることもいっぱいある!二人とも、地獄に足を踏み入れたのよ!」

「…夏海…」

「…あなた、あなたも分かってた筈なのに、私の苦しみを…。なのに…何故…?真実の父親なのに…真実の幸せを願ってるのなら、こんなこと…」

「ああ、分かってたよ…君の辛さを…。だから私は君と結婚した。君を救いたかった。お義父さんのことをいつか忘れて、私の方を見てくれることを願っていた。私が愛したら、いつか君も愛してくれると信じてた…。でも、君はいつもお義父さんの影を私に重ねていた。SEXの時は特にそうだった。お義父さんとしてきたSEXを思い出し、同じやり方でなければ感じなかった。ネクタイで縛ってくれと言われた時は正直驚いたよ。でも、君の感じる姿が見られるのならと、あらゆる手で君に尽くしたが、君の心から、お義父さんを消し去ることができなかった…。私は、もう誰にも愛されることなどないと思ったんだ…。でも、真実は…真実は…こんな私を…」

「…あなたのことを分かってあげられなくてごめんなさい。…でも…いつか、きっと今の私のように天罰が下る日が来るわ…いつか、きっとね…」

夏海は、もう涙を流さなかった。

ベッドから立ち上がると、スーツケースに詰められるだけ服を詰め込むと何も言わず家を出て行った。

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