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甘く、苦く

第16章 磁石【ウソつき】

「ほんとに……俺なんかでいいの?」

心配そうに聞いてきた相葉さん。



「いいんです。
もう、翔さんはどうやっても手にはいらないんです。
だから……相葉さん、わたしを今だけでもいいから、愛してください……」







今だけでいい。

ずっとなんて、言わない。

わたしを抱いてるときは、わたしを愛して……

「わかった。ニノ、ごめんね。」
「なにがですか?」
「俺、ニノのこと抱けない。」

えっ……?

なんで?


「なんで……ですか...」

わかんない。なんで...???


「ニノ、翔ちゃんのこと、好きなんでしょ?」
「そりゃ、大好きです。愛してますよ。」
「なら、その気持ち、ちゃんと伝えなきゃ。
翔ちゃんがダメだったら、俺、しっかり慰める。」

翔さんに…?


「ほら、頑張れ。電話しな。」
「うん。する。」

スマホの"翔さん"をタップする。


呼び出し音が流れた。

「でた?」
「んーん、」

結局、三回電話を掛けても出てくれなかった。

もう、帰ってるはずなのに…
寝ちゃったのかな?


「相葉さん、今日泊まってっていいですよね?」
「うん。いいよ。もう、寝よ?」

相葉さんが言ったときだった。

わたしのスマホが鳴った。

「翔さんから…相葉さん!ちょっと静かにしてね!」
「ん。」

『ニノ…?ごめん。寝てた。』
「あ、寝てたんですね。ごめんなさい。
あの…聞きたいことがあって…」

これで、話すの最後かもしれない。

そう考えたら、胸がきゅっと締め付けられた。


『なに?』
「翔さんは…わたしのこと、好きですか?」
『…』

無言。

やだ。

泣きそう…
はやく、返事して…


「嫌い、ですか?そうですよね。
わたしなんて、嫌いですよね。もう、嫌い…なんですよね…」
『ニノっ!待って!』

相葉さんが心配そうに見つめる。

「もぉ、いいですよ。
そんなに嫌いなんですね。わたしは…相葉さんに愛してもらいます。」
『ニノ!待って、ごめん、ほんとに…あのっ!』

もう、声なんて、聞きたくないよ…

俺はスマホを投げた。

「相葉さん、わたしたちが愛し合ってるの、翔さんに聞かせましょ?」
「ニ…ノ…?いいの?」

もう、さっさと抱いてよ。

『相葉くん!ニノ!!』
「相葉さん、ほっといていいです」


わたしたちは、堕ちていった。

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