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甘く、苦く

第66章 櫻葉 【帰り道】






ていうか…


「下とか上の話じゃなくて
俺は名前の話をしてたんですけど?」

「っ、え!?」

「俺は櫻井さんのこと、
今まで通りに呼ぶよ?

…そうじゃなきゃ、
もうほんと恥ずかしいから」


きゅっと唇を結んでる
櫻井さんと目が合って、
忘れていた感情が溢れ出てきた。

"好き"って気持ちが溢れて、
止まんなくって。


「伝わらないなら、
俺は何度でも言うよ。

俺は櫻井さんが好きだ。

どうしようもないくらい、
櫻井さんが好きなんだ。」

「…ずっと、ずっと待ってたし。
…でも雅紀は下だし?」

「なっ!?」

「違うの?」

「…そんなのわかんないよ。」


櫻井さんはなにそれーって
俺の方を見て笑う。

その笑顔が本当に綺麗で、
一生かけて守りたいって
思ったくらいだったんだ。


「…帰りますかぁ」

「だね。」


いつもの帰り道は、
もう前みたいな切ない思いが
しなくて済むような帰り道だった。


「櫻井さん、またね」

「おう、またな。」


眩しい笑顔を残して、
櫻井さんはいつも通りの道を行く。

まだよくわからないけど…


これから俺達は、きっとまた
同じ帰り道で。

あんなふうに、辛い想いは
もうしなくて済むんだ。

そう思ったら、
自然と頬が緩んだ。


「…あ、連絡先……」


…まあいっか。

だって、これからは櫻井さんの
隣に好きなだけいれるんだからね。


…櫻井さんに会えるまで
あと一週間。


ー終わりー

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