
甘く、苦く
第69章 翔潤【near to you】
びっくりしたけど、
今は、今だけは許してあげる。
だって、なんか今日の翔さん、
おかしいんだもん…。
「…っは、潤……」
「なに?」
「…潤っ……」
何度も何度も俺の名前を呼ぶから
焦れったくって。
翔さんを抱き締めたまま、
無理矢理唇を塞いだ。
「んっ……」
「…ね、翔さん…どうしたの?」
俺の問い掛けに、
顔を曇らせる翔さん。
「もしかして、言いづらいこと…?」
「……あのね、潤…俺、今度のオフ、
仕事入っちゃって…それで、あの…」
「…そっか、それで?」
「オフ、もう今年、なくて…
約束、してたこと…できないかもって…こと」
「そっかぁ…」
まさか、それを考えてたのかな…?
俺のこと、そんなに大切に
想ってくれてるのかな…?
…ちょっとくらい、
自惚れたっていいよね…?
「だから、今夜…くらいは、
早く帰ってきたかったのに…ごめん!」
「…いいよ。大丈夫。」
だって、今日は一人の夜じゃないもん。
いつもは一人の夜で、
すごい寂しいけど。
「ね、潤…いつも、どんな気持ち?」
「え?なにが…?」
「俺のこと、待ってる気持ち…
どんな気持ちで、俺のこと、
待っててくれてるの…?」
「…え、あっ…う、…寂しいなぁ、って。
早く、帰ってこないかなぁ…って」
俺がそう言って
翔さんの方を見れば、
だーだーと涙を流してるこっちを見てた。
