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甘く、苦く

第73章 磁石 【move on now】session 5

二宮side



おっそいなぁ…


カレーのルーを溶かしながら
そんなことを思った。


「むー…。」


さすがに遅い。
遅すぎる。

だって…いつもの1・5倍くらい遅い。

そりゃあ、
俺だって心配にもなるさ。


『まだ時間かかる?』


使い慣れたアプリ。

…ていうか、
いくらなんでも俺たちの会話、
サバサバしすぎじゃない…?

同じようなことしか
ないじゃんか…。


今日のご飯がどうとか、
帰りの時間だとか。

そればっかりだよ…。


いや、結構重要なことだけどね。
だけど…なんていうか……


もうちょっと…
カップルらしく…って、

カップルらしいって、
なんだろ。




「─────…買っちゃった…」


マンションのすぐ近くにあるコンビニで
買ってしまった。

こんなの買うなんて
女々しいかもしれないけど。

しかも…こんなだらしない格好で。


頭←寝癖付き
上←ダボダボのパーカー
下←しわくちゃのスウェット
足←使い古したスニーカー


…あー、もうちょっとマシな格好が
あったと思うんだけどなぁ…。


いやでも、
よくこれを買えたと思う。

こんな、恋愛の本なんて
買ったことなかったんだからな。



「…はぁ、」

「え…?二宮……なにそれ…」



終 わ っ た 。

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