甘く、苦く
第74章 お山【miss your voice.】session 1
「っはは、やだなぁっ…」
辛い。
苦しい。
嘘だ。
そんなの、間違ってるよ。
だって翔くんは…翔くんは……
考える度、意識する度、
自信がなくなる。
…本当に、翔くんは
ユーレイじゃないの…?
そんなの、聞けるわけないじゃん。
ユーレイだなんて、
決まったわけじゃない。
仮にユーレイだとしたら、
どうして俺の前に現れたの…?
だって、おかしいでしょ。
俺が翔くんの声を聴いたのは、
まだ蒸し暑い秋だったんだから。
その頃から、ずっと…?
有り得ないよ、そんなの。
絶対、違うから。
でも…
もし、そうだったら。
翔くんは、なんて言うのかな…
俺は、翔くんになんて
言ってやれるだろう…。
なんて言えば、いいんだろう…
…わからない。
わからないけど…
信じたくない。
翔くんが、死んでる、なんて…
考えたくも、ないよ…
「〜っ…!」
止めようと思っても、
涙は一向に止まらなかった。
…ねぇ、翔くん…。
翔くんの声が、
今すごく聴きたい…。
翔くんに、会いたい…。
今、どこにいるの…?
ー続くー