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甘く、苦く

第74章 お山【miss your voice.】session 1






なんだか、
ニノの目線が怖かった。

だって、
「智ひとりで話してる。」
なんて言われちゃ、
ちょっとは気にするじゃんか。

…ひとりで、なんて…
話してないよ…


だって翔くんは、
隣のクラスのひとで…

……って、あれ…?

隣のクラスに、
あんな人いたっけな…。

クラス合同での保体とかでも
見かけたこと、ないかも…。


───いやいや。

まさかそんなわけない。

だってずっと、
話せてたんだし、
触れるんだよ?

ユーレイなわけ、ないって。


「じゃあおーちゃん、またねぇ」

「うん、ばいばい雅紀。」


雅紀に微笑みかけて
後ろのニノに手を振る。

慣れたと思っていた
ひとりの帰り道。

いつもは、隣に翔くんがいたけど。

ひとりで歩くと、
ここの道って、こんなに広かったっけ。

だなんて。


付き合って一緒に帰ってたから
気付かなかったけど、
やっぱり慣れって怖いもんだ。

だって俺、今すごく翔くんに会いたい。

それくらい、依存しちゃってる。


「……あれ、おっかしいなぁ…」


こんなにも、
俺は弱い人間だなんて思わなかった。


溢れ出てくる涙が、
それをいやでもわからせる。

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