甘く、苦く
第75章 櫻葉【ANSWER.】
次の日の朝は、
ふたりともぎこちなくて。
「なに?ふたりしてそんなに笑顔で…
なんかあったの?」
「ん?なんもないよ。
ね、兄貴?」
俺の方を向いて、
顔をしわくちゃにして
笑ってくれる雅紀。
そんな雅紀が、
今はとても愛おしくて。
あれだけ嫌っていたはずなのに、
人ってのは変わるもんだ。
「あ、兄貴、先に行くね。」
「…うん」
卵焼きを口に放り込む雅紀が、
“ちょっとちょっと”と
俺に手招きをしていた。
茶碗を片付けてから
雅紀の方へ近付けば。
ぐいっと腕を引かれ、
びっくりして見上げた。
その刹那、
ちゅ、
と小さく短いキスをされた。
「んなっ、おまっ…」
「なにー、兄貴、
ご飯粒とってあげただけ〜♪」
楽しそうにそう言って、
玄関まで走っていく雅紀。
その後ろ姿を見て、
ふーっと長い溜め息。
…あー俺、相当雅紀に
振り回されてるな…。
なんて。
「翔も早く言っちゃいなさいよ。
ほんとにもう、なんでこんなにも
違うのかしら…」
母の小言も、
もう気にならない。
だって俺達は、
もう本気で愛し合ってるから。
ー終わりー