
甘く、苦く
第75章 櫻葉【ANSWER.】
パタン、と
静かに音を立てて閉まるドア。
…切り替え、早すぎ。
そんなことを思って、
ふっと息を吐いた。
…して、やられた。
本来ならば、
俺が襲いに行くはずだったのに。
逆だった。
俺がやられてた。
俺が、翻弄されていた。
「っ…」
なんとなく、スマホを開いて
最初に目に飛び込んできたのは、
母からのメッセージだった。
『AVだかなんだか知らないけど、
みるなら音量下げなさいよ。』
……嘘だろ。
下まで、聞こえてたのか…。
すぐさま雅紀に伝えようと、
トークルームを開いた。
『俺たちの声、下まで
聞こえてたってよ。』
そう送れば、
すぐに既読がついて
『ごめん』
って返ってきた。
…いや、謝らせたいわけじゃなくて、
普通にからかってただけなんだが…
『違う違うw
今度から場所考えような。』
なんて。
俺は次を、期待してしまっている。
『うん、そうだね。』
…え……?
少し、からかってみただけなのに、
雅紀は本気にしている。
…そうか。
俺たち、兄弟謙、恋人だもんな…
