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甘く、苦く

第76章 末ズ【Please Kiss Me.】

松本side



「───俺も、俺も好きだよ。」

小さな声が、耳元にまでしっかりと届く。

柔らかな声音。

思わず、肩が震えた。


「────和」


少しだけ体を離し、向き合う。

和の瞳は少しだけ熱を帯びており、
不安気に揺れている。


伝えなくちゃ、始まらない。

言ってしまわないと、始まらない。


「俺も、好きだよ。」


その声は、ひどく緊張していたせいか
震えていて、小さかった。

やっとの思いで伝えられた思いも、
目の前にしては声が小さくなる。

ガチガチに緊張した俺に向かって、
和は泣きそうになるのを堪えながら
「うん…」とただ頷いた。


“俺も”

と確かに動いた唇。

それと同時に空気が動いた。


「────っ」


体が重い。
和が抱き締めている…?

意識した途端に体が熱くなる。


「…潤くん、熱い…」

ふわり、と目の前で
崩れそうな笑顔を向けられ咄嗟に顔を伏せた。

「────?潤くん…も、泣かないでよ…」

「ごめっ…あぁ、情けないな…」

「……そんなことないよ。」


柔らかな腕に抱かれ、瞳を閉じる。

その瞬間、ちゅ、とリップ音が響いた。


「…潤くんも、俺にキス、して…?」


こちらを見上げながら、
目をゆっくりと閉じる和。

俺はその煌めく唇に、
そっと、自分のものを重ねた。


ー終わりー

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