
甘く、苦く
第76章 末ズ【Please Kiss Me.】
どうしよう。
この気持ちを伝えてしまうのがいいのか、
それとも寝たふりを続けるのか。
どっちが、いいんだろう…。
潤くんが優しく俺の髪の毛を撫でてくれる。
気持ちよくて、本当に寝ちゃいそう。
「…卑怯だね、俺。───ごめん。」
切なそうな声が聞こえて、
こっちまで辛くなってしまう。
俺だって、伝えられていないんだから。
この状態からどうにか免れようと
体を捩ってみた。
そうしたら、潤くんの笑い声が聞こえる。
「…疲れてるんだな…ごめんね。」
よしよし、と頭を撫でられてから、
額に柔らかいものが触れる。
それが唇だと確信した瞬間、
思考が停止してしまった。
思いっきり、目を開けてしまった。
「────ぁ」
気まずそうに目を逸らす潤くん。
俺は泣いていたに違いない。
その証拠に、視界が歪んでいるから。
「ご、ごめん、つい…」
「───潤くん。」
俺の震えた小さな小さな声が零れた。
俺の発した言葉に顔を上げる潤くんに、
そっと手を伸ばし、腕を引っ張り抱き付く。
「───俺も、」
俺も好きだよ。
だから、お願い。
ちゃんとこっち見てよ──
