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甘く、苦く

第80章 にのあい【愛 think so.】






まーくんがそういう人だっていうのは、
ずっと昔から知ってたけど。

俺が泣いてて泣いてくれる、とか
もう随分なかったから、
動揺しちゃったんだ。


「…もっー、ニノ、ごめんねぇ…
我慢してたのっ、ニノだけじゃないから〜…」


子供みたいにわんわん泣くから、
どっちが泣いてたかわかんないくらい。

…でも、そんな子供っぽいところは、
俺だけが知っているんだ。


そう思ったら、俺だけの『特別』って
案外たくさんあるのかも、なんて
ひとりで自惚れていた。


「もぉ〜、ニノぉ…」

「うん、なーに?」

「もうニノだけでいい〜っ」

「…俺だってそうだよ。」


まーくんの髪が頬に当たって
目を細める。

この気持ちも新鮮で、
心の裏側を擽られてるような。

幸せな音が、響いてる。


ふわふわと揺蕩い続ける思考。
柔らかいものに包まれた感覚に、
無性に泣き出したくなってしまう。



…ねぇ、まーくん。

俺だってまーくんだけでいいよ。


…なんて、真情を吐露できたらいいのに。
今の俺にはまだ、できない。

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