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甘く、苦く

第81章 お山【Now I'm ready.】




でも、自惚れなんかじゃないと思う。

実際に、昨日よりも笑顔で、
声も少し高めで弾んでいる。


「あっ、翔く〜ん、髪の毛
変な方向になってるー」


ふふって可愛らしく笑いながら、
俺の髪の毛に優しく触れる。

…あ、やばい。


この距離感に、今更気付いて
顔が赤くなる。

あえて開けておいた距離から、
ズームインされると
めっちゃ恥ずかしいな。

しかもなんか、いい匂いする。

…やばい。


「…翔くん?」


なんにも喋らない俺を心配してか、
智くんが首を傾げて俺を見てる。

目線を下げた時に見えた
少し垂れた眉。


途端に、触れたくなった。


「…わっ、え、なにぃっ?」


わしゃわしゃと智くんの髪の毛を触り、
そのまま立ち上がった。


「しょっ、しょーくんっ?」


耐え切れなくなった想いが、
ここで爆発しそうで。


「…ごめん、車行こ。」

「…?…うん、」


不安そうな智くんの声も、
聞こえないふりして
そっと手を包み込んだ。

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