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甘く、苦く

第81章 お山【Now I'm ready.】

大野side



「星を、見に行こう。」


なんて
急にロマンチックなことを言い始めた。


「…たまにはいいこと言うんだね。」

「たまにはって、余計。」

「ふふ、ごめんごめん。」


­灯りもない道を、走ること三時間。

少し怖くなって、翔くんに尋ねた。


「…ねぇ、この道であってるの?」

「あってるよ。
ちゃんと調べたし。」


暗闇の中でもわかるくらい、
翔くんの笑顔は輝いている。

…疑ってる自分がバカみたいだ。
翔くんが下調べを
怠ることなんて ないよね。普通。


「あ、ほら、見えてきた。」


翔くんが道路の傍らに車を止めて、
指を指した。

「どれ?」

「あれ。」

「どこ?」

「あそこ。」

「だから、ど」


翔くんの方を向いたら、
頬を持たれてキスされた。


ちゅっ

と短いリップ音が車内に響き、
顔が熱くなる。


「あ、翔く…」

「ねぇ、見えるでしょ?」

「…あ、ほんと、だ…」


翔くんが指差す先には、
チラホラと見える星。


「……ここ、さ、好きな人とくると
その人とずっと一緒にいられるんだって。」


不意に、そんなことを口に出す翔くん。

びっくりして翔くんの顔を見たら、
照れてるのが分かった。


「……ありがとう」


好きって気持ちが溢れて、
もう、壊れちゃいそうだ。

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