
甘く、苦く
第81章 お山【Now I'm ready.】
翔くんが照れ笑いを浮かべながら
「智くんとどうしても来たかったんだ。」
って、俺の手を握りながら言う。
不意に繋がれた手に驚きながらも
「ありがとう」ってお礼しかできない。
…だって。
翔くん、すごいカッコいいんだもん。
ちゃんと顔見れないよ。
繋がれた手もすごい熱いし、
顔も熱いし。
クーラー効いてるはずなのに、
どうしてこうも熱いのかな。
「…智くん?」
「ん?」
無理矢理貼り付けた笑顔を
翔くんの方に向けた。
翔くんは目を伏せて、
俺の手をさっきよりも強く握る。
どうしたんだろう?って
心配してたら
「キスしたい。」
って。
さっきは承諾も得ないで
勝手にしたくせに。
「…うん、俺も。」
震えた声で、
でも、精一杯絞り出した。
初めてのキスじゃないのに、
初めてみたいな緊張感が漂う。
おかしいよね。俺ら。
ウブなカップルみたいだ。
