
甘く、苦く
第81章 お山【Now I'm ready.】
智くんが鼻歌を歌いながら
髪の毛を洗っていた。
可愛いなぁ、なんて思いながら
見つめていた。
ふたりとも、
お風呂は長く入らないタイプだから
ちゃちゃっと済ませる。
…お風呂上がりって、意外と好きだ。
「あ、翔くん、」
くいくい、と俺の服の裾を引っ張って
「髪の毛乾かして〜」
なんて、ドライヤーを持った智くんが
笑顔で頼んでくれるから。
いいよ、ってすぐ返すと、
子供みたいに無邪気に喜ぶ。
「…あ、翔くんと
髪の毛おんなじ匂いするねぇ〜」
「ふふ、そうだね。」
ふわふわの智くんの髪の毛に
指を沈めながら匂いを嗅いでみた。
…確かに、使ってるシャンプーの匂い。
「はい、できたよ。」
「んふふ、ありがと。」
セットされていない前髪は、
俺が一番知ってるはず。
さらさらのふわふわで、
思わず触りたくなるほどだ。
