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甘く、苦く

第82章 末ズ【Omens of love.】


松本side


こんな熱帯夜には、
会いたくなる人がいる。


ラグにごろんと寝転がり、
天井を見つめた。

最近会えてないなーなんて、
呑気に考えていた。

ふと横を見ると、
机の下に置かれた雑誌や漫画が目に入る。

すべて、和が置いていったものだ。


パーソナルスペースに
踏み込まれるのは苦手だ。

だけど、和なら許せた。
不快に思わなかった。


「…はぁ」


溜め息ばかりが募る。

嫌な気持ちを振り払おうとしても、
そんなこと出来ない。



…ダメだ。
会いたい。今すぐに。


『…え?会う?』

「うん、いい…?」

『…いいけど。…我儘ばっかり。』


呆れた声。
本当は、嬉しくて仕方がないくせに。


「今から行く」

『うん。』

「うん、行くから、待ってて」

『…待ってるね。』


少しトーンの上がった声。

急いで車に乗り込み、
和の顔を思い浮かべる。

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