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甘く、苦く

第82章 末ズ【Omens of love.】




俺ばっかり好きみたいじゃん。
寂しくなって、辛くなる。

…俺の気持ちなんか考えてないんだろうな。
こんなに、こんなに大切にしてるのに。
記念日を大切にしてるのに。


…こんなふうに怒ったって、
悲しくなるだけ。

作ってしまったホールケーキも、
用意したご馳走も。

俺は今日この日のために、
潤くんのために張り切ってたのに。


いつまでも引きずるのは
よくないかもしれない。

でも、約束を破るのは
もっとよくないと思う。

仕事付き合いだって大切だ。
でも、それよりも大切なことがあるのに。

二人でいられる機会なんて、
これからいくらであるかもしれない。

でも、その機会が今日なんだ。

失望したまま、お風呂へ向かう。
普段よりも足取りが重いのは、
全部全部潤くんのせい。

こんなに涙が出るのは
潤くんのせい。


「…グスッ」


壁に寄り掛かって涙を零した。
そのまま床にずるずると落ちた。

こんな記念日なら、いらない。

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