テキストサイズ

甘く、苦く

第82章 末ズ【Omens of love.】




「ていうかこれ、高そうだよね。」


翌朝、和に言われた言葉。


「ん?…ちょっと頑張ったくらいだよ。」

「ふぅん…俺なんかのために、
こんなに高いの買わなくたってい…」

「ダメでしょ。普通。」


俺なんか、とか、言わないでよ。

俺にとっては、すごく大切な人なのに。


「和はもっと自分を大切にしないとダメ。」

「してるつもりだよ?」

「つもりでしょ。
和がいなかったら、俺…」

「もっ、もう、重いって!
誕生日の翌日にそんなこと言わないでよ。」

「…和も約束してくれる?」


じっと見つめたら、見つめ返されて。


「…うん、約束する。」


と、左手を見せながら
照れ臭そうに微笑んだ。

キラリと光るリングが眩しくて
思わず目を細めた。


「あ、潤くん、
今度は潤くんちに行ってもいい?」

「うん、いいよ。待ってるから。」

「いつ行けばいい?」

「んー、また連絡するよ。」

「うん、わかった。」


また、忙しい日が始まる。

会えなくても、平気だ。
俺たちを繋ぐものが、できたから。


「…じゃあ、いってきます。」

「うん、いってらっしゃい。」


和の笑顔に背中を押されて、
玄関を開けた。

今度はいつ会えるのだろうか…。

毎日考えることを、
今日は悩まずに決めた。

「今日、会いに行こうかな…。」

どうしても、毎日会いたいから。


会えなくても、本当は平気じゃないし、
毎日一緒にいたいくらいだ。


「…あ、和?」

早く、伝えよう。

今日も一緒にいよう。
明日も明後日も、その先もずっと。


ー終わりー

ストーリーメニュー

TOPTOPへ