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甘く、苦く

第84章 櫻葉【Kissからはじめよう】




「お前のこと、好きなんだけど…」


え、誰かと間違えてる?


「なぁ、いいだろ?」

「ちょ、ちょっと待って…」


息もできないくらい、
すぐ近くに顔がある。


…翔ちゃんの手、熱い…。

同じくらい火照った俺の頬に、
翔ちゃんはそれを添えた。


「ん…」

「…可愛い」


…男に可愛いとか、やめてよね。


「……翔ちゃん?」


覆い被さったまま、
何の反応もなし。

…ちょっとちょっと。
俺のこと、こんなにしておいて無視?



「翔ちゃんったら…」

「………ぐぅ、」


…は?


「…寝てる………?」


この人はどんだけ、
自分勝手なんだろうか。

この人の彼女さんは大変だ。


「はー、もう…」


ドキドキしちゃったじゃん。

メンバーに可愛いとか、キスとか…。



……あれ、


キス…………?



「えっ、ええ、あ、え!?」


そうだ…!
俺翔ちゃんにキスされたんじゃん…!

なっ何で今まで冷静だったんだ…!?

普通にやばくない!?


「…ん〜」


そんな俺の気持ちを他所に、
翔ちゃんは心地よさそうに眠る。

子供みたいな寝顔に、
溜め息を吐いた。


無垢で、屈託のない寝顔。

…罪なヤツだな。

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