甘く、苦く
第84章 櫻葉【Kissからはじめよう】
静かに離れていく唇と、
翔ちゃんの体。
火照った俺の体は、
まだ翔ちゃんを欲しがっていた。
「…キス、しちゃったね。」
「……うん、」
ふっ、と翔ちゃんが微笑んで、
俺の頬に手を添えた。
びく、と思わず動いて、
おそるおそる翔ちゃんと目を合わせた。
その瞳は、俺だけを見ていて、
しかも、少しだけ潤んでいた。
───────……泣いてる?
普段の翔ちゃんからは考えられない。
お酒の力って、すごい。
多分翔ちゃんは、酔ってるんだ。
だから、こんなふうにキスしてるんだ。
「…雅紀、もう一回……」
「っは…?っ…、ちょっ、」
あー…ダメだ。
これ、いつまで続くんだろ。
また顔が近付いてきて、
今度は覆い被さってきた。
乱暴に俺の口をこじ開けてきて、
翔ちゃんの舌が入ってくる。
翔ちゃんって、
キスする時こんな顔してんだ。
なんて、ぼーっとしながら見ていた。
…あー、だるい。
お酒の力もあって、うとうとしてきた。
…早く終わってくれ…
てか、夢であってくれ。
…ん?
そういえば、これ、
夢じゃないんだよな。
冷静に考えたら俺、
メンバーにキスされてる…?
しかも、翔ちゃんに…?
「っ、は!?」
一気に眠気が飛んだ。
そういえばそうだ。
なんで俺は翔ちゃんのキスを
受け入れちゃってんだ…!?!?