
甘く、苦く
第84章 櫻葉【Kissからはじめよう】
櫻井side
背中が少し痛くて、
目が覚めた。
見慣れないアイボリーの天井。
それと、いつもと全く違う匂い。
…それから、ラグの色とか、
…そんなことはどうでもいい。
なんで俺は、ここにいるんだ?
「…いて…」
重たい体を起こせば、
すぐ隣で雅紀が眠っていた。
寒いのか、俺の方へ体を寄せている。
そんな姿に、
きゅっと胸が締め付けられた。
……いやいや、バカか俺は。
恋愛感情は抱かないって、
とうの昔に決めたんだ。
だって俺たちは、メンバーで、
男同士だから。
雅紀が後片付けしてくれた形跡。
片付けの途中で眠ったのだろうか?
出しっぱなしの開けていない缶ビールが
放置されている。
申し訳ない気持ちが沸いてきて、
どうにか片付けようと思うが、
雅紀を起こすのは可哀想だから。
為す術もなく、
雅紀に寄り添ってもう一度目を閉じた。
