甘く、苦く
第85章 大宮【スフレ】
追っ払っておいて、
今度は俺があっちの家に行くとか。
すげえだせえな。
ー ピンポーン♪ ー
「…はーい?」
ぱたぱたとスリッパを鳴らして
遠慮がちに開かれた扉。
「っえ、和?」
戸惑いの表情を見せたあと、
すぐに、
「どうしたの?
ふふ、なんか相談?」
と、柔らかく笑う。
それから、「入ってー」と
俺の分のスリッパを出そうとする。
その背中に手を伸ばした。
ーバタンッ
勢いよく閉まった扉。
鍵の閉まる音。
「…和?」
俺の腕の中で、
もごもごと動く。
抵抗しようと俺の腕を掴む智。
「ねえ、なに。
酔ってんの?」
「酔ってねー」
「じゃあ、なんで…」
唇を尖らせて、 俺を少し睨む。
「俺よりちいせえくせに、
生意気なんだよ。」
智の顔を無理矢理持って、
顎を掴んだ。
「黙ってろよ、」
「っ…ん、」
ちゅ、と狭い玄関に響いた。