甘く、苦く
第85章 大宮【スフレ】
無理に唇を奪ってから、
体を離した。
「……ええ…」
智が目を見開いて、
頬を引き攣らせながら
「和、相談に乗るとは言ったけど…
キスしていいとは…」
「ちげえよっ!わかれよ!あー、くそ!」
すう、と息を思い切り吸ってから
「お前のことが好きなんだよ!
わかれよ!ばか!」
と。
バカみたいにでかい声で
智に言ってやった。
そうすれば、ふにゃん、と笑い。
「ふは、なんだぁ。
そんなこと?」
「そ、そんなことって、お前なぁ…」
ふへへ、とアホみたいな顔で、
アホみたいな声を出す智。
「ふふ、和が俺のこと好き?
なんか不思議だね。」
「ああ?」
「ほら、そんな怖い顔しないでよ。
なに?やっぱ俺のこと好きって
今更気付いたの?」
「…だったら、悪いかよ。」
図星だ。
「そっかぁ。
じゃ、付き合う?」
「…は?」
「え、キスしたくせに付き合わないの?
なにそれ。無責任。
俺、もうこんなに──」
智が俺の手を取り、
心臓の位置に当てた。
「ほら、すごいでしょ?
超ドキドキしてる。」
「…ああ、」
ふわり、と笑ってから
「じゃあこれからよろしくね。」
と。